晶子のお庭は虫づくし

大森拓郎さんの「早春の野草」

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早春の野草
大森さん撮影のなの花と花粉団子をつけているミツバチ
大森さん撮影の菜の花と花粉団子をつけているミツバチ

                                                   

 

自然観察に適当なごく普通に見られる野草について、その特徴、観察の視点、話題となる事項 を列挙しました。 

ホトケノザ・・・畑や道ばたに普通に見られる越年草。
特徴:

@葉が茎の周りを円形状に巻く様が、仏像を安置する仏座に似ている(これが名前の由来)、

Aシソ科のため茎が四角(春の七草のホトケノザは、キク科のコオニタビラコで本種とは別物)、

B花がピンク色で、細長い筒があり、ランの花の形に似た唇弁花。

C閉鎖花を多くつける。

観察の視点:

@葉の付け根に蕾のような赤い閉鎖花が見られる。自家受粉で実を結ぶ閉鎖花が一つの茎で
どれくらいあるか、数十本調べる。(全体の約6割を占めるほど多いのに驚く)。

大森さん撮影のホトケノザ
Aそれぞれの花(唇弁花)が、カバが大きく口を開けているようにみえ、上唇の内側奥におしべが4本見られる。昆虫が下唇の赤い斑点(標識)めがけて飛
来し、細くなった筒の中へ進むと、背中に花粉が付く仕掛けになっている。

B花を抜いてなめてみよう。筒の底に蜜がある。子房は4個

 

 

 

オオイヌノフグリ・・・畑や道ばたに普通に見られる越年草。
ヨーロッパ原産で1887(明治20)年ごろ帰化。

特徴:

@花冠はるり色で径7〜10mm、花弁は4枚に分かれ、うち1枚が特に色濃く1枚が薄い。
花柄(茎から伸びた細い枝先)は2〜3cmと長い。

Aタチイヌノフグリに比べ花や草姿が大きく、実の形が雄犬の後ろから見たふぐり(陰嚢、
睾丸、金玉のこと)に似ている(これが名前の由来)。

観察の視点:

長い花柄につく色が美しく目立つ花。
花弁につけられた濃い青い筋、2本の太いおしべと中央にめしべ、ルーペで見ると、その奥に
白い毛があり底に蜜が光る。

昆虫が青いガイドラインに沿って飛来、花の中央の太くてしっかりしているおしべはつかみや
すいが、花柄が長いために揺れ動き、落っこちないようにしがみつくうちに花粉が昆虫の体
に付着する仕掛け。
このように昆虫に花粉を運ばせる工夫が巧妙に仕掛けられている。
果たして、蜜を求めて、どのような昆虫が来るか?ミツバチ、ハナアブ、アリ、・・・。

大森拓郎さん撮影のオオイヌノフグリの蜜を吸うアリ
話題:

花の色は、るり色(濃い紫味を帯びた青、ウルトラマリンブルー)とかコバルトブルーであるが、「星のひとみ」、「猫の目(キャッ・アイ)」とも表現され、それが
ちりばめられたように咲く様は実に美しい。
フグリと呼ぶのはかわいそうな気がするが、定着しているところをみるとこれまた絶妙の命名と感心する。オオイヌノフグリの学名は「ベロニカ」。
ベロニカは、キリストが十字架を背負って刑場に向かう途中、顔をぬぐう布をささげたという伝説上の聖女。イエスはその布に面影を写して返したと伝えら
れ、オオイヌノフグリの花をじっと見ているとキリストの顔が浮かぶ?

 

 

 

 

ハコベ(コハコベ)・・・世界中どこでも見られる越年草。
特徴:

@白い花弁はVサインのように2つに深く裂けるため実際には5枚のものが10枚に見える。

A茎の先端に花が咲くが、花の下から両側に2本の分枝を出して、倍々に枝の数を増やし広
がっていく。この結果、どこにでも“はびこる”ことからハコベと名付けられたと言われる。

B茎の片側に根元に向って短い軟毛があり、これが植物体についた水滴を根元に運ぶ。
これで、雨の少ない時季にも青々とみずみずしい。

C茎を意図的に折って引っ張ると、糸状の強い筋が現れるが、これが、踏まれても茎を折れ
にくくしている。

Dそのほかにも、夕方、花が閉じるときにおしべが中央に集まり、花粉をめしべにつける
(自家受粉)。
受粉すると花が下向きに垂れ下がり、受粉していない他の花を目立たせ、虫による受粉効率
を高める。世界全土に広がっているのもうなずける。

大森さん撮影のハコベ
なお、茎も葉も柔らかなため、幼少の頃、ニワトリやウサギの餌にするためよく採りに行った。

観察の視点:

小さな花もルーペで拡大してみると神秘的な形をしている。花弁は何枚?花の大きさの割に丸い大きな子房と花柱(3個)。

話題:

島崎藤村の詩“千曲川旅情の歌”「小諸なる古城のほとり・・・緑なすはこべは萌えず・・・」にあるハコベ。
春の七草の「セリ・ナズナ / ゴギョウ(ハハコグサ)・ハコベラ (ハコベ)/ ホトケノザ(コオニタビラコ) /スズナ(カブ)・スズシロ(ダイコン)春の七草」の
ひとつハコベラ(古名)。

 

 

 

ナズナ・・・アブラナ科。別名ペンペングサ、シャミセングサ、十字花。

特徴:

@直径約3mmの小さな白い花で、花弁が4枚。

A年中発芽し、蕾、花、実が長い期間同時につく。

B実の形が三味線のバチに似る。

C春の七草のひとつで食用、薬用にも利用。

観察の視点:

1本の茎に、つぼみ、花、実(種)が、同時に次から次へと長期間にわたりついていることを
確認。

話題:

@名前の由来には、別名を含めると多くの説がある。ナズナの名は、「撫ぜたいほど可愛い」と
いう気持ちから「撫菜(なぜな)」、夏には枯れてしますので「夏無(なつな)」がそれぞれ変化した
もの。別名のペンペングサ、シャミセングサは、実の形が三角形をしており、三味線のバチに似
ていることから名づけられたもので、ペンペングサは、弾く音がペンペンと聞こえるため。ただ、
小さな子は三味線のバチの話をしても、直ぐには通じない。花弁が4枚で十字の形に見えるの
で十字花ともいう。

大森さん撮影のナズナ
Aナズナは昔から「食」との関係で人の生活と密着してきた。植物の種名の末尾に「ナ(菜)」がつくものは、食べられるという意味がある。
食べるものは早春までのもので、室町時代から七種粥に入れるようになり、江戸時代にはナズナ売りがいて庶民の食卓に載った。
「ナズナ売りもとはたただだと値切られる」という江戸川柳があったくらい。

B「ペンペングサすら生えない土地」と比喩されることがあるが、逆に荒地でも生える生命力のある強い草と認められている証拠。

 

 

 

カラスノエンドウ・・・マメ科。

特徴:

@花は紅紫色でマメ科特有の蝶形。

A実(さや)が熟すとよじれて、7〜10個程度の黒い丸い種を飛ばす。

B全体は蔓状態に伸び、小葉は3〜7対で互生。先端から普通3分する巻きひげを出す。

観察の視点:

共生関係の2つを確認。

@根を掘り起こしてみる。根には粒状の根粒(写真下。3×1.5mmの大きさ)がついており、その中に空気中の窒素を取り込む根粒菌が棲む。
この根粒菌は、カラスノエンドウから養分をもらい共生関係にある。

大森さん撮影のカラスノエンドウ 大森さん撮影のカラスノエンドウ
A葉のつけ根の托葉の中央部に黒紫色の丸い斑紋があるがこれは蜜を分泌する密腺。

これを目当てにアリが寄ってくるが、これが、カラスノエンドウの茎や葉を食う害虫を負い払う結果
となる。

ただ、カラスノエンドウの先に多くつくアブラムシ(幼虫、成虫とも)は例外で、カラスノエンドウから
糖分を吸い取り、一部を排出するため、アリがそれをなめ、肉食のテントウムシがアブラムシを
食べに集まる。「食う食われる」の関係が見られる。

大森さん撮影のカラスのエンドウとテントウムシ
カラスノエンドウの密腺(葉のつけ根の托葉の中央部に黒紫色の丸い斑紋があるがこれは
蜜を分泌する密腺)の蜜を吸っているアリの撮影に成功しました。

大森さん撮影のカラスノエンドウの蜜腺の蜜を吸っているアリ→

大森さん撮影のカラスノエンドウの蜜腺の蜜を吸っているアリ
話題:

仲間にスズメノエンドウ(種は2個)があり、スズメよりカラスの方が大きいので本種をカラスノエ
ンドウと名付けた。スズメノエンドウとカラスノエンドウとの交雑種にカスマグサ(種は4〜5個)が
あるが、この名はカラスの「カ」とスズメの「ス」、「マ」はその間、そして草と命名した。

大森さん撮影のカラスのエンドウとテントウムシ

 

 

 

 

 

セイヨウタンポポ・・・タンポポは、大きく分けると在来種(ニホンタンポポ)と外来種があり、
現在、都市に見られるのはヨーロッパ原産で殆どが帰化したセイヨウタンポポとその交雑種。

特徴:

黄色い頭花(また頭状花)は一つの花であるかのように見えるが、200前後の舌状花が円盤状に
集まり形成(キク科植物共通の特徴)。

日が当たると舌状花が開き陰ると閉じる。舌状花は先に5歯があり1つに合着しているため1つの
花びらをつけているように見える。

舌状花の中央部はめしべが伸び、おしべが計5本合着、舌状花の下端には子房があり、その上部
から白い冠毛が生える。

Aセイヨウタンポポは、花が大きく年中咲き、単為生殖のため1株でも種子が出来、しかも多くて小
さく軽いため遠くへ飛び、環境破壊され土地に根付く。
これに対して在来種は、基本的には春にしか咲かず、花も種子も小さく他花受粉で増える。

大森さん撮影のタンポポ
観察の視点:

@外来種と在来種の見分け方は、花期に総苞片が反り返っているのが外来種。
反り返っていないのが在来種。

A花が終わると花茎は曲がって横に倒れ、そう果が熟す頃には、種子が風に乗って遠くに飛ぶように
立ち上がって長く伸び、総苞内片まで反り返って果実(綿毛<冠毛>のついた種子)を風で飛ばす
[風散布の代表]。

話題:

@日本には明治(1868〜1912年)初、札幌農学校創立当時、アメリカ人教師が蔬菜用に北アメリカから種子を入れ、それが逃げたものとされる。

A和名、タンポポ(漢字では「蒲公英」)の由来は、古名が「鼓草」とのあるように、頭花を鼓に見立て「タン・ポンポン」と音を真似たとするものが有力。
茎の両端を切り水に浸すと鼓の形になる、冠毛が「たんぽ槍」の形に似る、などの説もある。
英国名では「ダンディライオン」(「ライオンの歯」:ギザギザした葉がライオンの牙を連想させる)、フランス語では「ピッサリン」(「床の中で小便する」意で利尿
剤として効果)。

B子どもたちの草花遊びでは、水・風車(茎の両端を切り水に浸すと反り返り、茎に松葉を通して、水力または風力で回す)、草笛(茎を笛として吹く。うまく吹
けない)。

C花も葉も食べられる。苦味が特徴。摘み立ての新鮮なもので、天ぷら、和え物、おひたし、生サラダ。そして、たんぽぽコーヒー(根を乾燥させて炒ったもの
がコーヒーの代用品)、タンポポ茶 (葉を乾燥させ、ハトムギ茶などと配合)。

 

 

 

・オオアラセイトウ(アブラナ科)
・アラセイトウとは、現在でいうストックの古称で、これよりも大型なため、オオアラセイトウと名付けられた。名付け親は、牧野富太郎博士。

・別名が多く、ショカツサイ(諸葛菜。諸葛孔明が、出征時に野菜不足に対応して栽培)、ムラサキハナナ(紫花菜。花が紫で食べられるため)、紫金草(注)。
ハナダイコンと呼ぶこともあるがこれとは別種。
(注)戦後各地に広めたのは星薬科大学の前身である星薬学専門学校の初代校長、山口誠太郎先氏。14年当時、中国南京の紫金山近くで軍務についていた
が、帰国後持ち帰ったタネを「紫金草」と名付け希望者に分与し、広まったとされる。

・中国東北部原産の一年草・越年草。開花時期は3月〜4月頃。花は径2.5〜3cmの紅紫色の4弁花。若い葉は食べられるため原産地中国北部では野菜とし
て栽培され、種子からはアブラナと同様に油を採取することもある。

・日本には、江戸時代(1894年前後)に渡来。鑑賞用として栽培されていたものが野生化した。・モンシロチョウ、スジグロシロチョウの食草。

                                                                                             以上

 

 

               

 

 

2014.4.18更新

2014.6.10更新

 

 

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